雑草という草はありません。
昭和天皇
草にはみな名前があります。
はじめに
皆様こんにちは、カクテル好きブロガーのシサカです!
BARで何気なくオーダーするカクテル。
ですが飲んでいるとふと…

このカクテルってなんでこんな名前なんだ??
何となくそんなことを考えた事はないでしょうか?
じつは当たり前に我々が呼称するその名前の裏には、想像以上に人間臭いエピソードが隠されているのです。
カクテルの名前というのは、ただの記号ではありません。
そこには必ず、誰かの情熱、偶然の出会い、時代背景、そして悪ふざけが刻まれています(笑)。
飲んでいるカクテルの語源を知ると、同じものでも味が変わります。
バーテンダーさんとの会話が弾みます。
隣の席の人に「実はそのカクテル、面白い由来があって…」と話したくなります。
それこそが、カクテルという文化のひとつの醍醐味なのです。

その一杯の背景を知ることは、単なる知識の蓄積に非ず。
それはすなわち「カクテル」を通じて、時空を超えた異なる物語がクロスオーバーするということ。
歴史の一瞬に立ち会い、遠い時代の誰かと味や香りを共有するというロマンがあるのではないでしょうか。

今回の記事では、思わずBARで話したくなる『カクテル名の由来と物語』を、その背景とともに紹介していきます。
次にBARへ行くときのために、ぜひ頭の片隅にインプットしてみてください!
🧪 飲酒の現場で生まれたカクテル

ハイボール

ウイスキーと炭酸水を氷で割ったとてもシンプルなレシピですが、食事にも合わせやすいことから日本の居酒屋文化にも定着しているハイボール。
この超定番ドリンクには名前の由来が諸説あります。
①鉄道の信号から名付けられた説

1880年代頃のアメリカ大陸横断鉄道の敷設ラッシュの時代、当時の現場では工事の進捗具合をボール信号機で確認し合っていました。
忙しい現場での作業者たちの休憩時間は短く、ハイボール信号(ボールが高く引き上げられたら工事が遅れているので急げの意)が出たらすぐに工事に戻るようウイスキーを水で割って割って飲みやすくしたのがハイボールと呼ばれるようになり、いつしかそれが水ではなく炭酸で割られるようになった。
②ゴルフ場での出来事から命名された説

イギリスのとあるゴルフ場で炭酸水をチェイサーにウイスキーを飲みながらスタート待ちをしていた紳士がいました。
予定時刻よりも早く自分の名前がコールされ、慌てふためいた紳士は、炭酸水をウイスキーの入ったグラスにそそぎ、急いで口に流し込んだところへ別の誰かが打ち損じたボールが飛んできました。
それを見た紳士がハイボール!と叫んだことからウイスキーのソーダ割りが「ハイボール」と呼ばれるようになった。
どちらも、爽快感を象徴する名前にふさわしいエピソードですね。
19世紀末ごろに誕生したとされ、日本では2008年頃からサントリーの「角ハイボール」キャンペーンで再ブームが起こりましたね。
非常に見る機会の多いカクテルですのでこの話は知っていると面白いのではないでしょうか!
スクリュードライバー

ドリンクを「ねじ回し」で混ぜていたことから
1940年代、アメリカテキサスの油田で働いていた作業員が、マドラーを使わずにスクリュードライバー(ねじ回し)でウォッカとオレンジジュースを混ぜて飲んでいたことからこの名前が付きました。
荒々しい現場における雑な振る舞いが、爽やかな定番カクテルを生み出したのです(笑)
ウォッカとオレンジジュースだけというシンプルさゆえに世界中で愛され、今や誰もが知る一杯となっています。
また、ウォッカ特有の飲み口はアルコール感があまり無く、知らずに飲んで酔ってしまうことから女性に勧めて酔わせるための「レディーキラーカクテル」としても有名になりました。
※詳しくはこちらの記事をご参照ください▽

ジン・フィズ

炭酸の”シュワシュワ”という音をそのまま名前にした
1888年、ニューオーリンズの「インペリアル・キャビネット・サロン」のオーナーバーテンダーであるヘンリー・ラモス氏が考案しました。
「フィズ(fizz)」とはソーダのはじける擬音語であり、レモンの酸味と炭酸の爽快感が、アメリカ南部の暑い気候にぴったりだったことから瞬く間に広まりました。
また、「ラモス・ジン・フィズ」というレシピは卵白とクリームを加え、12分間も振り続けるという地獄のようなレシピで知られています(笑)
お店が全盛期の頃には、シェイク専属のバーテンダーが何人も雇われており、リレー式にシェイクしていたそう。
エスプレッソ・マティーニ

客の無茶ぶりに応えて生まれた
「目を覚まさせて、ぶっ飛ばしてくれるものを」
イギリスの伝説的バーテンダー、ディック・ブラッドセル氏が、疲れ切ったスーパーモデルの要望に応えて創作した、ウォッカとエスプレッソの衝撃的な組み合わせのカクテルです。
2000年代以降、世界的なブームとなり、カクテルランキングでは毎年必ず上位にランクインされる超人気カクテルとなりました。
カフェインとアルコールの共演が今も多くのバーで親しまれています。
ハーベイ・ウォールバンガー

”酔ったサーファーが壁を叩いた”というエピソードから
「サーフィンの大会で負けたサーファーのハーベイがやけ酒としてこれを飲み、その後酔っ払ったハーベイが暴れて壁を叩きながら帰っていった…。」
真偽はともかく、そんな思わず語りたくなるエピソードが1970年代のカリフォルニアで大流行し、陽気なサーフカルチャーを象徴する一杯として定着しています。
スクリュードライバーにガリアーノというイタリアのリキュールを浮かせたこのカクテルはマーケティングの成功例としても知られており、1970年代には全米で最も人気のカクテルの一つとなりました。
🧑🎩 実在の人物が生んだカクテル

ネグローニ

イタリアの「カミーロ・ネグローニ伯爵」の名前から
1919年、イタリアのカミーロ・ネグローニという伯爵が、食前酒をオーダーしました。
そのオーダーに応えるために、フィレンツェの「カフェ・カソーニ」のバーテンダー、フォスコ・スカルセッリ氏がこのカクテルを考案し誕生しました。
オレンジの飾りが添えられるのは、伯爵がオレンジを好んだからだと言われています。
伯爵の好みが、世界的なカクテルへと昇華したのです(笑)。
ネグローニはヨーロッパにおいてアペリティフ(食前酒)のド定番カクテルとなっており、「ネグローニ・ウィーク」という国際的なカクテルイベントまで開催されるなど、ヨーロッパ圏のBAR文化の象徴ともいえるカクテルです。
※詳しくはこちらを▽

ギムレット

お医者さんの名前がカクテルに
イギリス海軍の軍医ギムレット卿が、海兵たちのジンの飲み過ぎを憂慮し、健康維持のためにライムジュースを加えたのが始まりと言われています。
兵士たちの健康管理のために生まれたカクテルは、今や世界中の定番となっています。
元々は医療目的で生まれたカクテルですが、文学を通じて有名になった稀有な例でもあります。
レイモンド・チャンドラーの小説『長いお別れ』に出てくる「ギムレットには早すぎる」という台詞でさらに有名になったという経緯から、小説名がそのままカクテル言葉になり、誘いをはねのける「お断りカクテル」としても有名です。

ロブ・ロイ

スコットランドの義賊をモチーフに作られた
18世紀スコットランドの義賊ロブ・ロイ・マグレガーを讃えて作られたカクテルです。
同名のオペラの上演に合わせて誕生したという説もあり、英雄譚の香りが漂います。
マンハッタンのウイスキーをスコッチに変えたレシピで、1894年にニューヨークのウォルドーフ・アストリアホテルで当時上演されていたオペラ『ロブ・ロイ』の成功を記念し作成されたものと言われています。
「スコットランド版マンハッタン」というちょっとややこしい通り名があります(笑)
ヘミングウェイ・ダイキリ

ヘミングウェイが「甘くないダイキリを」と注文したことから生まれた
文豪アーネスト・ヘミングウウェイのオーダーから生まれたカクテル。
キューバのBAR「ラ・フロリディータ」で愛飲され、本人の豪快な飲みっぷりと共に伝説となりました。
ヘミングウェイは一度に10杯以上飲むこともあったと言われ、店には彼専用の胸像が今も飾られているそう。
別名「パパ・ドーブル」とも呼ばれ、”パパ”はヘミングウェイの愛称、”ドーブル”はスペイン語で「ダブル」を意味します。
彼の人生のように、鋭く、乾いた一杯といえますね。
チャーチル・マティーニ

ウィンストン・チャーチルの逸話から
イギリスの首相であり、酒豪としても知られるウィンストン・チャーチルの好みにちなんで命名されました。
チャーチルは「完璧なマティーニとは、冷たいジンにベルモットを遠くから眺めるだけでいい」という言葉を残しており、フランスの方角に向けて一礼する(最高級ベルモットの多くはフランス産)ことでベルモットの代わりとしたという逸話があります。
ベルモットをほとんど入れない(あるいは全く入れない)このスタイルは、首相の豪胆な性格を象徴する究極のドライ・マティーニとして知られることになるのです。
第二次世界大戦中も愛飲し続けたといわれるこのカクテルは、彼のウィットに富んだ発言も相まって強いリーダーシップの象徴となりました。
🎭 比喩・ユーモア・言葉遊びから生まれたカクテル

フレンチ75

フランス軍が使用した大砲の名前
第一次世界大戦のフランス軍が使用した75mm野砲のように”強烈な一撃”を与えることから名付けられました。
1915年頃、パリの「ハリーズ・ニューヨーク・バー」で生まれたとされ、野砲のように”効き目が強烈”だったことからこの名が付きました。
当初はコニャックベースでしたが、後にジンが主流となり、シャンパンの泡が弾丸を彷彿とさせます。
また、映画「カサブランカ」に登場するカクテルとしても有名で、映画から入ってこのカクテルを知っている人もいるのではないでしょうか。

ブラッディ・メアリー

イングランドのメアリー1世の異名「血まみれのメアリー」に由来する説(最有力)
1920年代にパリの「ハリーズ・ニューヨーク・バー」で創作されたとされ、当初は「バケツ・オブ・ブラッド(血の バケツ)」という物騒な名前でした(笑)
このブラッティーメアリーの由来には諸説ありますが、トマトジュースの赤が、どの説にも説得力を与えているミステリアスな一杯ですね。
また、血を連想させる独特の色合いから秋に飲まれる「ハロウィンカクテル」としても認知されています。

マイタイ

「マイタイ・ロア・エ・アロア(最高)!」
創作者のヴィクター・”トレーダー・ヴィック”・バーガロン氏が、友人のタヒチ人に試飲させたところ、感動のあまり叫んだ言葉がそのままカクテル名になったという微笑ましいエピソードがあります。
南国の陽気さがそのままカクテルに宿っているようですね。
1944年にカリフォルニアで生まれ、ティキカルチャーブームを象徴するカクテルとなりました。
17年物のジャマイカン・ラムを使った最初のレシピは、あまりの人気にラムが枯渇し、後にブレンドラムで作られるようになったとか。
ゾンビ

飲むとゾンビのようになる事から
これを飲んだお客さんが酔い過ぎて行方不明になり、発見された時の風貌がさながらゾンビのようであったことから命名されました。
1934年、ハリウッドの「ドン・ザ・ビーチコンバー」というお店のマスター、ドン・ビーチ氏が考案したカクテルで、アルコール度数は驚異の40度超!!
この強烈なカクテルに対し「一人二杯まで」というルールが発令されたことで、逆に逸話になりました。
※非常に危険なカクテルでもあるので迂闊に飲まないように注意しましょう。詳しくはこちら▽

複数種類のラムを組み合わせたこの複雑なレシピは、「バーテンダーへの挑戦状カクテル」としても知られています。
オリジナルレシピは極秘とされ、バーテンダーたちは材料を「ドン’s・ミックス」などと暗号化して扱っていました。1939年のニューヨーク万国博覧会で大人気となり、会場では一日に何千杯も売れたと言われています。
XYZ

「アルファベットの最後(XYZ)=これ以上ない究極のカクテル」
「これがカクテルの最終形態」という自信の表れとも、「最後に飲むカクテル」という意味ともとれる、哲学的な名前を持つカクテル。
1920年代の禁酒法時代に生まれたとされ、ラム、コアントロー、レモンジュースという3つのシンプルな材料から成るカクテル。
この抽象的な名前が、逆に考察を加速させます。
📚 文学・芸術・文化に由来するカクテル

ベリーニ

画家の名前から
ルネサンス期ヴェネツィア派の画家、ジョヴァンニ・ベリーニの名前を冠するカクテル。
1948年「ハリーズ・バー」のジュゼッペ・チプリアーニ氏が、ベリーニ展の開催時期にレシピを試作していたところ、白桃とプロセッコを混ぜた時にできた淡いピンク色がベリーニの描く絵画の色彩に似ていたことから名付けられました。
チプリアーニは「カルパッチョ」の発明者でもあり、料理界にも大きな影響を与えた人物で、芸術と美食が交わるイタリア文化を象徴したカクテルです。
本場ヴェネツィアでは、白桃の旬である初夏に楽しむのが伝統とされているそう。
アレキサンダー

名前の由来には諸説あります。
①アレクサンドラ王妃に由来する説
1901年、イギリス国王エドワード7世とアレクサンドラ王妃の戴冠式を記念して王妃に奉げるために考案されたカクテルであるという説。
この説では、アレクサンドラ王妃の名前がそのままカクテル名として命名されたと言われています。
②バーテンダーの名前に由来する説
20世紀初頭、ニューヨークのレストラン「レクターズ(Rector’s)」のバーテンダー、トロイ・アレキサンダー氏が考案したという説。
当時有名な鉄道広告のキャラクター「フィービー・スノー」という、白いドレスを着た女性にちなんで「白いカクテル」を作ろうと考案し、自分の名前「アレキサンダー」をこのカクテルに名付けたと言われています。
(どう見ても白いカクテルには見えないけど)
ブランデーとカカオの香りが、どこか古典的な雰囲気を漂わせ、デザート感覚で楽しめる甘さが、食後の一杯として長く愛されてきました。
本カクテルはもともとジンベースでしたが、後にブランデーを使う「ブランデー・アレキサンダー」が主流となりました。
クリーミーな味わいから「飲むデザート」とも呼ばれています。
ファウスト

ゲーテ作品の登場人物から
「ファウスト」とはゲーテの「戯曲」の登場人物。
ヘーゼルナッツリキュールとウォッカを使い、知識を求めて魂を悪魔に売ったファウストの葛藤を、甘美さと苦さで表現しています。
文学作品をモチーフにしたカクテルの中でも特に哲学的な一杯で、BARで注文すれば「教養ある飲み手」として認識されるかもしれませんよ。
🌍 歴史や文化の背景を持つカクテル

キューバ・リブレ

”キューバの自由に乾杯”
1900年頃、ハバナでアメリカ軍兵士がラムにコカ・コーラを混ぜて飲み、「キューバの自由に乾杯!(Viva Cuba Libre!)」と叫んだことが始まりとされています。
ラムとコーラが織りなす「自由なキューバ」の象徴的な一杯。
米西戦争後の独立運動の熱気が、このシンプルなカクテルには込められています。
そしてラム・コークとの違いはライムを加えること──この一絞りが、単なるミックスドリンクを政治的メッセージを持つカクテルへと昇華させました。
モスコミュール

モスクワ+ミュールの造語
「モスクワ(ウォッカ)」と「ミュール(ラバ=ジンジャービールのキック)」を掛け合わせた名前で、文化的情緒を感じさせるカクテルですね。
銅マグで飲むのが伝統で、冷たさが長く保たれるだけでなく、見た目の高級感も人気の理由です!
1940年代にウォッカの販売業者、ジンジャービール(ジンジャエールの原型)のメーカー、銅マグの製造業者という3人の経営者が偶然出会い、各々が抱えていた在庫を処分するためにこのカクテルを生み出したという逸話があります。
このカクテルのヒットにより、アメリカでウォッカが急速に普及したという歴史があります。
ソルティ・ドッグ

船乗りの俗称「ソルティ・ドッグ」から
「ソルティ・ドッグ(塩辛い犬=海の男)」という船乗りの俗称から名付けられました。
1950年代にイギリスで生まれたとされ、もともとはジンベースでしたが、後にウォッカが主流となります。
塩の効果で、グレープフルーツの苦味が和らぎ、より飲みやすくなるという科学的な効果も期待できます。
グラスの縁に塩を付けない「グレイハウンド」というバージョンもあり、これも犬の名前からとられています。
🧡 恋人・女性・人間関係が生んだカクテル

マルガリータ

バーテンダーが亡き恋人マルガリータを偲んで作ったという説(最も有名)
1930〜40年代にメキシコで誕生したとされ、名前の由来には数多くの説があります。
(その他の説は割愛しますが)そんな様々なエピソードもあり世界で最も人気のあるテキーラカクテルで、冷凍する「フローズン・マルガリータ」も定番となっています。
グラスの縁に塩を付けるのは、テキーラをストレートで飲む際の伝統的な飲み方(塩を舐めてライムを噛む)から。
ホワイト・レディ

初めてウエディングドレスに白を採用したヴィクトリア女王をイメージ
1920年頃にロンドンで生まれ、後にパリの「ハリーズ・ニューヨーク・バー」で現在のレシピに改良されました。
当初はクレーム・ド・マントを使っていましたが、後にコアントローに変更され、よりドライで洗練された味わいに。卵白を加えるバージョンもあり、泡立ちがドレスのレースを思わせます。
ジンとコアントロー、レモンの組み合わせが生む透明感が、名前と重なったエレガントなカクテルですね。
物語を持って、BARへ行こう

カクテルは、ただの飲みものではありません。
その名前一つひとつに、人間の叡智や営みが刻まれています。
人々の想い、先人の知恵、そして悪ふざけ…。
歴史の一瞬が、グラスの中で今も生きています。
次にBARへ行ったとき、よければこの記事で知ったことを思い出してください。
友人や他のお客さんに

そのカクテルって実は…
と語りかけてみるのもいいでしょう。
バーテンダーさんとの会話のきっかけにしてもいいでしょう。
カクテルが、ただの飲み物から”物語”へと変わる瞬間──。
それを味わえるのが、大人の特権ではないでしょうか。
次はどんなカクテルを注文するのか―。
その選択もまた、あなた自身の人生をつくります。
興味があればぜひ誰かに話してみてください。
ではまた。

サラリーマンの傍らブログ運営。
お酒にまつわる情報や考えを、心理学や哲学など色んなネタを絡めながら発信しています。
気分によって文体がコロコロ変わるので悪しからず。


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