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酔った勢いでなぜ人は本音を語るのか?|科学が解き明かすアルコールと感情表現の関係

皆様こんにちは、酒好きブロガーのシサカです!

「酔うと饒舌になる」
「酒が入ると本音が出る」


――これは古今東西、あらゆる文化で語られてきた普遍的な現象ではないでしょうか。

これを読んでいる皆さんは飲み会の帰り道、もしくは次の日、「あんなこと言わなきゃよかった…」と後悔した経験がおありではないでしょうか?(私はしょっちゅうあります泣)

もしくは、

  • 普段は無口な友人が急に語り出す
  • いきなり「褒め or 説教」してくる上司
  • 突然愛の告白が始まる恋人

など、お酒の席で”本音”が飛び交う光景は誰もが一度は経験したことがあるでしょう。

古代ローマには「In vino veritas(酒の中に真実あり)」という格言があり、日本でも「酒は本心を現す」と言われてきました。

ですがなぜ、アルコールを飲むと、普段は抑えている本音や感情が溢れ出してしまうのでしょうか?

それは単なる気のせいなのか、それとも科学的な根拠があるのか?

そして、酔った時に出る言葉は本当に「本音」なのか?

今回は心理学や脳科学の研究をもとに、この誰もが経験する身近な現象を掘り下げていきます。

これを読めばあなたの「酔った自分」への理解が、きっと変わるはずです。

では行きましょう!

目次

脳科学的が突き止めたアルコールが脳に与える影響

お酒を飲んだ時というのは、じつはアルコールが脳に大きな影響を及ぼしていることが判明しています。

脳科学の観点からその大きな要因を2つ紹介します。

理性の「ブレーキ」が外れる

お酒を飲むと、脳の中でも特に前頭葉(前頭前皮質)という部分の働きが鈍くなります。

前頭葉は、いわば脳の「司令塔」といえる場所。「これを言ったらまずいかも」「今は我慢しよう」といった理性的な判断をする”人間らしさの核”のような役割を担っています。

心理学者のギアンコラ(Giancola)の研究では、ビール中瓶を1〜2本飲んだくらいの軽い酔いでも、すでに前頭葉の働きが低下し始めることが分かっています。

そして具体的にどんな変化が起きるかというと…

具体的な変化
  • 衝動を抑えられなくなる
    「言いたい!」という感情が「やめとこう」という理性に勝ってしまう
  • 周りの目が気にならなくなる
    「これ言ったら変に思われるかな?」という配慮が薄れる
  • 今が全て、になる:
    「あとで後悔するかも」よりも「今すぐやりたい!」が優先される

つまり、普段は理性がかけている「ブレーキ」が効きにくくなるんです。

不安を消す脳内物質の活性化

アルコールが摂取したとき、じつは脳の中では不思議なことが起きています。

GABAの活性化

お酒を飲むことで、不安や恐れを抑制する神経伝達物質「GABA(ガンマアミノ酪酸)」の働きが活発になります

これにより、

具体的な変化
  • 「どう思われるか」の不安が消える
    普段感じる社交不安が薄れて、リラックスできる
  • 失敗への恐怖が小さくなる
    「嫌われたらどうしよう」という心配が減る
  • 心の壁が低くなる
    プライベートな話にも抵抗なく踏み込む

となるわけです。

そしてさらに、ドーパミンなどの「幸せホルモン」も増えて気分が高揚することもわかっています。

この「不安減少」と「気分アップ」のダブル効果が、普段なら言えないことを言える後押しをしてくれるわけです。

なぜ本音が出るのか?3つの心理学的メカニズム

お酒の影響というのは脳だけでなく、人の心にまでも影響を及ぼします。

1. 視野が狭くなる近視効果「アルコール・ミオピア理論

心理学者のスティール&ジョセフス(Steele & Josephs)が提唱した「アルコール・ミオピア理論」という理論があります。

ミオピアは「近視」を意味し、つまり酔うと視野が狭くなって、目の前の事しか見えなくなるという事です。

酔った状態だと、

具体的な効果
  • 目の前のことに集中しすぎる:
    相手の笑顔や楽しい雰囲気など、「今ここ」の良い部分だけが見える
  • 先のことが想像できない:
    「明日気まずくなるかも」「関係が壊れるかも」といった未来が見えなくなる
  • 具体的な感情が勝つ:
    「なんとなくやめた方がいい気がする」という直感より、「今すぐ言いたい!」という感情が勝る

まるで、カメラのズーム機能で目の前だけにピントが合っていて周りがぼやけている状態です。

なので「将来の後悔」より「今の気持ち」を選んでしまうんですね。

2. 感情が極端になる

普段、私たちは湧き上がる感情を上手にコントロールしています。

怒りを感じても冷静に話す、悲しくても我慢する、好きな気持ちを抑える――。

これを心理学では「感情調整」と呼びます。

ですが、

心理学者グロス(Gross)の研究によれば、お酒が入るとこのコントロール機能がガクンと落ちてしまい、特に「反応の調整」がうまくいかなくなるというのです。

つまりどういうことかというと、

具体的な影響
  • 感情の波が激しくなって、喜怒哀楽が極端になる
  • 「やんわり伝える」「オブラートに包む」ができず、ストレートな表現になる
  • ちょっとした不満が「もう許せない!」になり、好意が「運命の相手だ!」になってしまう

あらゆる感情がいきなりMAXになり、歯止めが効かない状態
これが「酔うと泣き出す」「すぐ怒る」「愛情表現が大げさになる」という現象の正体なのです。

3. 「酔ってるから許される」という免罪符

面白いことに本音が出やすくなるのは、お酒の化学的な効果だけではないようです。

「酔ってるから仕方ないという社会的な雰囲気」も、実はかなり影響しています。

マーロット&ローシュノー(Marlatt & Rohsenow)という研究者が興味深い実験をしています。

実際にはアルコールを飲んでいない被験者に「お酒が少し入っている」と嘘をついて飲ませたところ、本当に酔った人と同じように開放的な行動をとったのです。
つまり「お酒を飲んだ」という思い込みだけで、行動が変わるということ。

所謂プラシーボ効果の一種と言えるでしょう。

これが何を意味するか?

「酔ったら本音を言ってもOK」「多少の失言は大目に見てもらえる」という社会の暗黙のルールが、私たちの行動に影響を与えているという見方をすることができます。

特に日本には「無礼講」という文化があり、これが本音を語る際の心理的な「免罪符」になっていると言っていいでしょう。
「お酒の薬理効果」+「酔ってるから」という言い訳――この2つが揃って、本音が出やすくなるんですね。

酔って語る「本音」は、本当の本音なのか?

さて、ここまで読んで気になるのは「じゃあ、酔った時に言ったことって、本当の気持ちなの?」という点ですよね。

本音には「層」がある

実は、人間の本音というのは一つではないのです。

私たちの心の中には、いくつもの「層」があります:

本音の階層

  • 表面の層: 社会的に適切に表現している気持ち
  • 中間の層: 本当は感じているけど、気を使って言わない気持ち
  • 深い層: 自分でも気づいていない、または認めたくない気持ち

お酒は主に「中間の層」を引き出します。

でも、これが「100%真実の気持ち」かというと、必ずしもそうとは言えないのではないでしょうか。

結局はどちらも「本当の自分」

心理学者のダニエル・カーネマンは、人間には「経験する自己」「記憶する自己」の2つがあると言いました。

同じように、「酔った時の自分」も「しらふの時の自分」も、結局はどちらも本物のあなたなのです。

酔った時の言葉は「完全な本音」でもないし「全くの嘘」でもない。

「抑制が外れた状態で出てきた気持ち」と考えるのが正確でしょう。

どちらか一方だけが「本当のあなた」というわけではないんですね。

お酒と上手に付き合おう

お酒は、私たちが普段築いている「心の壁」を一時的に低くしてくれます。

ですが物事とは常に表裏一体。

功罪が必ずあるのです。

良い面
  • 緊張がほぐれて、素直なコミュニケーションができる
  • 親しい関係を築くきっかけになる
  • 長年言えなかった「ありがとう」を伝えられる
悪い面
  • 相手を傷つける言葉を言ってしまう
  • 後悔する行動をとってしまう
  • 関係が壊れるリスクがある

飲み会が「コミュニケーションの潤滑油」と呼ばれるのは前者の効果ですが、「酔った勢いで言ってしまった…」という悔いは後者の結果ですよね。

酔った人の本音を聞いたら

もし誰かの酔った本音を聞いた場合、その言葉には確かに本人の気持ちの一部が含まれています。

でも同時に、感情が増幅されていたり、判断が歪んでいたりする可能性も考慮しましょう。

大切なのは、しらふの時に改めて話す機会を持つこと。

冷静な状態で確認することで、本当の気持ちが見えてきます。

自分が酔って本音を言ってしまったら

翌日、しらふの状態で振り返ってみることが大切です。

  • 「本当にそう思っているのか?」
  • 「どう伝えるべきだったか?」

この振り返りが、より良いコミュニケーションにつながります。

健康的なお酒との付き合い方

お酒は判断力を確実に低下させます。

この事実を理解した上で

大事なのは

  • 重要な話し合いや決断は避ける
  • 言いたいことがあるなら、適度な量で止める
  • 「酔わないと本音が言えない」が続くなら、普段のコミュニケーションを見直すサインかも

アルコールに頼らなくても素直に話せる関係や環境を作ることも、心の健康には大切です。

最後に

結局のところ、酔いとは私たち本音を隠す鎧を少しだけ外してくれる道具に過ぎません。

だから、そこから出てきた言葉をその後どう扱うかは、結局自分次第なんですよね。

今回の記事を読んで、「あの時言ったこと、やっぱり本心だったのか?」と疑心暗鬼になっている人もいるかもしれません。

あるいは「酔った友達の告白、どう受け止めればいいんだろう?」と悩んでる人もいるかもしれません。

大切なのは、酔った時の言葉も、しらふの時の態度も、どちらもその人の一部だということ

完璧に本音でもなければ、完全に嘘でもない。

人の心はそれほど単純ではないのです。

それと、

これは私の個人的な考えですが、
お酒は「本音を引き出すツール」というよりも、「今まで知らなかった一面に会える装置」という側面があると思っています。

普段は見せない相手や自分の一面を知ることで、理解が深まることもあります。

まあ、それ以上に後悔する日もありますが(笑)。

とはいえ、お酒は人類が何千年も付き合ってきた、素晴らしい文化の一つです。

その力を理解し、上手に付き合うことで、もっと豊かなコミュニケーションが生まれるはず。

次の飲み会では、ぜひここで見たことを思い出しながら、自分の「酔った時の自分」を観察してみてください。

きっと新しい発見があると思います。

時に後悔するのもまた一興。

あなたの楽しく健康的な飲み会ライフに少しでも役に立てることを願っています。

それでは。

P.S.

もし「やばい、酔って変なこと言っちゃった…」と後悔している人がいたら、素直に謝るのが一番です。
「酔ってて覚えてないんだけど、変なこと言ってたらごめん」の一言で、意外とすんなり許してもらえるものですよ。


参考文献

  • Giancola, P. R. (2000). Executive functioning: A conceptual framework for alcohol-related aggression. Experimental and Clinical Psychopharmacology, 8(4), 576-597.
  • Steele, C. M., & Josephs, R. A. (1990). Alcohol myopia: Its prized and dangerous effects. American Psychologist, 45(8), 921-933.
  • Marlatt, G. A., & Rohsenow, D. J. (1980). Cognitive processes in alcohol use: Expectancy and the balanced placebo design. Advances in Substance Abuse, 1, 159-199.
  • Gross, J. J. (2002). Emotion regulation: Affective, cognitive, and social consequences. Psychophysiology, 39(3), 281-291.
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この記事を書いた人

サラリーマンの傍らブログ運営。
お酒にまつわる情報や考えを、心理学や哲学など色んなネタを絡めながら発信しています。
気分によって文体がコロコロ変わるので悪しからず。

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