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酔って記憶をなくすブラックアウトについて|記憶・行動・責任をめぐる酒の科学

皆様こんにちは、酒好きブロガーのシサカです!

皆さんはお酒を飲んで、

昨夜の記憶が全くない…。
どうやって帰ったか覚えてない…。

という経験をしたことはないでしょうか?

朝、自宅のベッドで目覚めるも道中の記憶が全くない。飲み会の席で何を言ったかも憶えていない…。

これは多くの酒好きが体験した現象ではないでしょうか?

その酔って覚えていない状態をブラックアウトといいます。

それは「記憶が消えた」のではなく、「最初から記録されていない」状態です。

今回の記事では、ブラックアウトのメカニズムから実体験、そして「記憶のない行動の責任は誰にあるのか」という問いまで、まるっと解説していきます。

この記事を書いている私は、ブラックアウトをこれまで何度も経験しています(猛省)。

「記憶がないのに痕跡だけが残っている」という感覚がどういうものか、体験者としてお伝えします。

本記事の内容
  • ブラックアウトとは何か(よくある誤解を解説)
  • なぜブラックアウトが起きるのか(メカニズムをわかりやすく)
  • ブラックアウト中に何が起きているのか(実体験もご紹介)
  • ブラックアウトを防ぐ具体的な方法
  • 「記憶のない行為の責任」はどこにあるのか
目次

ブラックアウトとは「気絶」ではなく【記憶だけが失われる状態】

まず、ブラックアウトに関するよくある誤解を解消しておきましょう。

多くの人が「ブラックアウト=酔いつぶれて倒れること」と思っています。

ですが、それは正確に言うと少し違います。

ブラックアウトとは、意識の喪失ではなく、記憶の保存だけが停止した状態のことです。

つまり、ブラックアウト中でも人は普通に動きます。

歩いて、話して、笑って、電車にも乗る。でも、その経験が記憶として保存されていないんです。

なぜ記憶だけが失われるのか?

ではなぜ記憶だけが失われてしまうのか?

これは脳の「海馬」という部位が関係しています。

海馬は、「今起きていること」を「後から思い出せる記憶」に書き換える部位です。

いわば脳の保存ボタン

アルコールが一定量を超えると、この保存ボタンだけがうまく押せなくなります。体験はしている。でも、セーブされていない——そういう状態です。

2011年のワシントン大学医学部の研究では、海馬の細胞に少量のアルコールを与えても記憶形成への影響は小さかったが、大量に与えると記憶の書き込みが完全に止まることが確認されています(Journal of Neuroscience掲載)。

さらに面白いのは、「歩く」「電車に乗る」といった体に染みついた動作は、海馬とは別の部位が担っているという点です。

自転車の乗り方を忘れないのと同じ仕組みで、ブラックアウト中でも足はちゃんと動く。これが「記憶はないのに、体は家に帰っていた」という不思議な状態を生む理由です。

なぜブラックアウトは突然起きるのか【スピードが脳を追い越す】

実は「そんなに飲んでいないのに」という人ほど、ブラックアウトを経験しやすかったりします。

理由は、「量」ではなく「上昇カーブ」が問題だからです。

血中アルコール濃度が急激に上がると、肝臓の処理が追いつかず、アルコールが一気に脳へ流れ込みます。
このスパイクが海馬の保存機能を一時的に止めてしまうわけです。

研究によると、記憶がところどころ抜けるタイプのブラックアウトは比較的低い血中濃度から起きはじめ、まるごと消えるタイプはさらに高い濃度で急増します(Perry et al., 2006)。

また飲酒経験のある若年層の約50%が、生涯に一度はブラックアウトを経験しているという調査もあり、決して「特別な体質の人だけ」の話ではありません(Barnett et al., 2014)。

ゆっくり飲んでいれば同じ量でも記憶は残る。でも速く飲んだ瞬間に、脳は記録を止める。

そういうメカニズムになっています。

ブラックアウトのリスクを高める3つの要因

  1. 炭酸飲料との混合:チューハイ・ハイボール・スパークリングワインなど。炭酸が胃の動きを促進し、アルコールの吸収が速くなる可能性があります。ただし個人差があり、全員に同じ効果が出るわけではありません(Roberts & Robinson, 2007)
  2. 一気飲み・飲みゲーム:短時間で大量に飲むと血中アルコールが急上昇する。「飲みゲーム」や「プレ飲み」がブラックアウトリスクを有意に高めることが研究でも確認されています(LaBrie et al., 2011)
  3. 空腹状態:食べ物があると、アルコールの吸収にブレーキがかかります。逆に何も食べていないと、飲んだそばから血中に流れ込む。食事をとることで炭酸の影響も大きく抑えられることが研究でも示されています

ゆっくり飲んでいれば同じ量でも記憶は残る。でも速く飲んだ瞬間に、脳は記録を止めるという構造なんです。

ブラックアウト中の人間は「正常に壊れている」【行動できるのに、更新できない】

ここが、ブラックアウトの一番不思議なところなのですが…、

人は話す。判断する。歩く。でも、そのすべてが修正されないまま進んでいくんです。

通常、人間は行動しながら学習しています。

「この電車じゃない」「飲みすぎた」「帰ろう」——こうしたフィードバックが連続して積み重なり、行動が補正されていく。

ブラックアウト中の人は、この補正回路だけが切れています。
直前の出来事が記憶に入らないため、同じ失言を繰り返す。同じリスクを何度も取る。「さっきこれをやって問題になった」という学習が、リアルタイムで機能しない。

酔っ払いが同じ話を延々繰返すのはそういうことです。

「歩く」「話す」といった自動化された動作は、海馬とは独立した部位が支えているので動き続けます。一方で、状況判断・リスク評価・計画を担う前頭葉はアルコールの影響を強く受ける。

だから傍から見れば普通に振る舞っているのに、当の本人は何も蓄積されていない——これがブラックアウト中に”やらかし”が起きやすい、構造的な理由です。

また研究では、ブラックアウト中の状態が、性的被害・飲酒運転・暴力といった深刻なリスクとも関連することが指摘されています(Pressman & Caudill, 2013)。

「酔ってた」では済まされない理由が、ここにあるのです。

記憶の断片だけが残る夜【実体験】

ここからは、僕が実際に経験したブラックアウトの話をします。

「なんか大げさじゃない?」と思う方もいるかもしれませんが、体験してみると、上で説明したことが全部リアルに腑に落ちるはずです。

少し長いですがお付き合いいただければ幸いです。

「かくして私は社会的に小さく死んだ」

その夜、私は完全に仕上がっていた。

何が仕上がっていたのかは定かでないが、とにかく私は「今日はもう何をやっても許される」という、根拠のない確信に満ちていた。
酒とは恐ろしいもので、人間に“万能感”という名の粗悪な魔法をかける。

宴もたけなわ、私はついに上司の隣に陣取った。
普段なら「はい」「ええ」としか言えぬ私が、その夜に限っては違った。

「いや〜支店長殿、それは違うよね」

言った。確かに言った。

しかも笑顔で肩など叩いていた気もする。
さらに悪いことに、私はそのまま絡み酒モードへと移行し、なぜか人生論を語り始めた。

「結局、人って自由であるべきなんですよ」

お前の口は自由すぎるがな、と誰かが言うべきだったが、誰も止めなかった。
いや、止められなかったのだろう。

酔っ払いとは災害に近い。

やがて、私の体内で異変が起きた。
幸福の頂点は、たいてい胃袋の限界と同時に訪れる。

「……ちょっと、外の空気を」

この発言を最後に、私は夜の街へと放たれた。
そして数分後、私は夜空というキャンパスに向けて見事に吐いた。
まるでペルセウス座流星群かのような、それはそれは見事な放物線であった。
もしガリレオが存命なら、思わずノートに数式を書き留めたに違いない。

人はなぜ、ここまで美しく崩壊できるのか…。
自問する余裕すらないまま、私はすべてを地面に預けた。

しかし問題はここからである。
私はなぜか「もう帰れる」と確信し、駅へと向かった。

そして電車に乗った。
乗ったのだが、それがどこへ向かう電車なのか、私は一切確認していなかった。

車内での私は、なぜか落ち着いていた。
むしろ「今日はやってやったぜ」という達成感すらあった。
上司にタメ口をきき、外で吐き、行き先不明の電車に乗る。
たしかにやりきっている。

気がつくと、知らない駅にいた。

駅名を見てもピンとこない。
というより、文字が読めているのかどうかすら怪しい。
私はしばらくホームに立ち尽くし、「ここはどこだ?」という問いと向き合った。

だがこういう時、人間というのはとても賢い。
分からないなら、とりあえず寝ればいいと判断するからだ。場所は関係ない。

シサカ

まあ、実際ディオゲネスも樽で寝ていたわけだし…

などと考えながら私は、どこかの道端で眠りについた。

そして朝。

目を覚ました私は、空を見上げた。
青い。腹立たしいほどに、澄みきっている。

空が青いのか、
それとも私の顔が青いのか、判別がつかない。

なるほど、ここに来て認識にまで不具合が生じたらしい。
人間、ここまで来るといっそ清々しい。

私はゆっくりと体を起こし、ポケットを探った。

財布… ない。

この瞬間、昨夜のすべてが一本の線でつながった。
タメ口、嘔吐、誤乗車、野宿、そして紛失。
まるで短編映画のように、美しくまとまっている。

私は電柱にもたれ、深く考えた。
そして、ひとつの結論に至る。

「……もう、いっそ死んじゃおうか」

もちろん本気ではない。
ただ、そう言いたくなる程度には、私は見事にやり遂げてしまったのである。

だが同時に、妙な納得もあった。

人は人生を「自分の意志で選んでいる」と信じている。
もう一杯飲むのも、終電に乗るのも、すべては主体的な決断である、と。

しかし実際には、その意志とやらは、アルコール数杯で簡単に書き換えられる。
昨夜の私は自由だったのか、それともただ流されていただけなのか?

答えは明白である。

「自由意志などというものは、酔いの前ではあまりにも脆弱である」

そう考えると、多少は気が楽になる。
すべては私のせいであり、同時に私のせいではない。

私はもう一度、空を見上げた。
相変わらず青い。

そしてたぶん、私の顔も同じくらい青い。

……まあいい。
とりあえず、どうにかして帰ろう。

「記憶のない行動」の責任は誰にあるのか【記憶と責任の哲学】

哲学者のジョン・ロックは、人格の同一性を「記憶の連続性」によって定義しました。

今の自分が昨日の自分と「同じ人間」であるのは、昨日の出来事を覚えているから。記憶こそが「私」を繋ぐ糸だ—、というのがロックの考え方です。

ならば、ブラックアウト中の行為は「自分のもの」と言えるのでしょうか?

覚えていない。
関与した感覚がない。
その選択をした記憶がない。

ロックの定義に従えば、それは「別の存在」がやったことになります。

でも、現実はそう甘くありません。

社会は、記憶ではなく”行為”に責任を課すからです。

自分の身体が、自分の顔で、自分として行った行為は、記憶の有無に関わらず自分のものです。それが法であり、倫理であり、人間関係のルールでもあります。

哲学的には問いが残る。でも現実には、言い逃れはできないのです―。


ブラックアウトを防ぐ方法【知識より「設計」が大事】

ブラックアウトの原理が分かれば、対策はシンプルです。

ポイントをまとめると、以下のとおりです。

対策理由・根拠
食事をとってから飲む・最初の1〜2杯はゆっくり空腹時はアルコールが直接吸収されBACが急上昇する。特に最初の酒が危険
炭酸割りに気をつける炭酸が胃の排出を促進し吸収を速める可能性がある(個人差あり)
飲むスピードを落とす皮膚センサーを使った研究(Carpenter & Miller, 2021)でも、BACの上昇速度そのものがブラックアウトリスクと最も強く相関することが示されている
一気や罰ゲーム飲み、プレ飲みを避ける短時間での急速飲酒がBACスパイクの主因(LaBrie et al., 2011)

防ぐべきは量ではなく、”制御不能な上昇”です。

理解していても、防げないことがある

ここが一番厄介な話で、あの夜の僕は「二度とすまい」と思っていました。

それでもブラックアウトしてしまいます。

ブラックアウトの怖いところは、「もうやばい」と自覚したときには、すでにその自覚を保存する機能が失われている場合があることです。「気をつけよう」と思った記憶も、残らない。

だからこそ、制御は「その夜」ではなく「その夜が始まる前」に行うしかありません。

環境を整える。ペースを最初から決める。飲む場所と相手を選ぶ。

これは意志力の問題ではなく、設計の問題です。

まとめ|あなたが知らないあなたは、確かに存在する

本記事の内容をまとめます。

  • ブラックアウト=気絶ではない。意識はあるが記憶の保存だけが止まる
  • 問題は量ではなくスピード。血中アルコール濃度の急上昇が引き金
  • ブラックアウト中も人は「正常に」動く。ただし補正・学習がされない
  • 防ぐのは意志力より設計。飲む前の環境づくりが最重要
  • 記憶がなくても責任は残る。社会は行為に責任を課す

ブラックアウトとは、単に記憶を失うことではありません。

“制御できない自分”を、この世界に残してしまう行為。

その自分は笑い、動き、何かを選び、誰かに影響を与える。でも翌朝、あなたはその存在を知らない。知らないまま、その行為の結果だけを引き受けることになります。

「覚えていない」は、なかったことにはならない。

記憶を持たない自分が残した行為の責任は、翌朝目を覚ました自分のもとへ、きちんと帰ってきます。

だからこそ、制御は「その夜」ではなく「その夜が始まる前」にしかできない。

飲む量より、飲む環境と飲むペースを、最初に決めておく。それだけで、知らない自分を世界に放つリスクは、ずっと小さくなります。

後悔ではなく、楽しい思い出を増やしていきましょう。

ではまた。

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この記事を書いた人

サラリーマンの傍らブログ運営。
お酒にまつわる情報や考えを、心理学や哲学など色んなネタを絡めながら発信しています。
気分によって文体がコロコロ変わるので悪しからず。

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