酩酊は自発的な狂気に他ならない
セネカ
Nihil aliud est ebrietas quam voluntaria insania.
皆様こんにちは、避け好きブロガーのシサカです!
飲み会の翌朝、こんな経験はないだろうか。
- スマートフォンを開くのが怖い。
- 送信済みのメッセージを確認するのが怖い。
- 財布の中身を見るのが怖い。
- 昨夜の記憶が断片的にしかなくて、何をしたか正確に思い出せない
…。
そして鏡の前に立って、静かに誓う。「もう飲みすぎない」と。
その誓いを、人類は何度繰り返しただろうと思います…。
そして、数日後にはまた飲んでいる。しかも前回より少し乱暴に。
「酒癖を直したい」と思っているのに、直せない。
禁酒を決意するのに、続かない。
意志が弱いのか、自分がだらしないのか——。
この命題は多くの人を悩ませてきたのではないでしょうか。
とはいえ、そんな簡単にお酒を断てるならだれも苦労はしない…。
そこでおすすめなのが『減酒』という手法。
酒癖の改善に必要だったのは、禁酒ではなく減酒です。
今回の記事はそんな自分を責めている人にこそ、読んでほしいと思います。
酒癖を直したくて禁酒に挑戦する人々

かくいう私も散々酒癖には悩まされ、記憶を飛ばしたのは、一度や二度ではありません。
気づいたら自宅のソファで寝ていて、どうやって帰ったかが完全に空白。
翌朝の私は、昨夜の自分が残したゴミと後悔だけを証拠に、事件を再構成するはめになりました。
財布を失くしたこともあります。
免許証など、カード類の再発行手続きをしながら、粛々と後始末をしました。
知らない人に絡んだこともあります。
翌日、同行していた友人から「隣にいた人、絡まれてちょっと困ってたよ」と教えてもらい、顔から火が出る思いをしました。全く覚えていません。
電車を乗り過ごして終点まで行ったこともあります。
深夜の終点駅のホームで、「ここどこだ」と思いながら途方に暮れた記憶だけがあります。タクシー代は、その日の飲み代より高くつく。
※詳しい話はこちらの記事を▼

こういう失敗を重ねるたびに、人は「次こそやめる」と決意するのです。
そして禁酒を試みます。何度も、何度も。
なぜ禁酒は続かないのか

禁酒を試みても実際に成功する人はかなり少ないです。
その理由は次のことがあると思います。
無駄な完璧主義
「一滴も飲まない」という目標は、一見聞こえはいいですが、構造的にはひどく脆いのです。
一滴でも飲んだ瞬間に「失敗」になる。
そして失敗した人間というのは、たいてい開き直りますよね。
シサカ飲んじゃったしもういいや…
といった具合に…。
禁酒の失敗は、「自暴自棄の飲酒」に変わりやすい。だから禁酒前より飲みすぎる、という逆転現象が起きてしまいます。
心理学に「What-the-hell effect(やけくそ効果)」という言葉があります。
ダイエット中の人がケーキを一口食べてしまった瞬間、「もうどうせ失敗したんだから」と残り全部食べてしまう、あの現象です。禁酒の失敗も、まったく同じ構造です。一杯飲んだ瞬間に「今夜はもう終わり」と脳が判断して、ブレーキが消える。
0か100かの目標は、0を維持している間は強い。
でも一度0が1以上になると、もう止まらない。
禁酒とはつまり、毎晩崖の縁に立ち続けるようなものなのです。
お酒が悪いわけではない
問題はお酒ではなく、飲み方にあります。
夕暮れどきの一杯のビールは好きです。人と囲む鍋と熱燗も好きです。
飲む量と、飲む状況と、止められない環境が問題だったのです。
「禁酒」という言葉を使った時点で、お酒を敵扱いしてしまっていた。好きなものを封じ込めようとするから、続かないんです。
シラフの自分と酔った自分は別人だった
これが一番の原因だと思います。
朝の自分は禁酒を誓いますが夜になると別人が現れます。



今日頑張ったし一杯くらいいいっしょ。
一杯だけ一杯だけ。
そしてその一杯が気付けば五杯になる。
翌朝また朝の自分が後始末をする。
このループを何度も続けることになる…。
夜の自分はアルコールで判断力が下がっています。そこに朝の意志は届きません。
必要なのは強い意志じゃなくて、夜の自分が失敗しにくい仕組みでした。
減酒という選択肢を知った


0か100かで考えるのをやめた
転機は、ある飲み会の翌朝でした。
その夜は「今日こそ2杯で終わりにする」と決めて出かけました。
禁酒ではなく、2杯だけ飲む。そういう目標です。
結果は3杯でした。
禁酒なら「失敗」です。でもそのとき、なぜか不思議と清々しい気持ちでいる自分がいました。
3杯で帰れた。記憶はある。財布も、スマホも、ちゃんと手元にある。
「あれ、これでよくない?」と思ったのです。
それまで私の頭の中には「飲むか、飲まないか」の二択しかありませんでした。
禁酒か、さもなければ潰れるまで飲むか。
その二択の間に、広大なグレーゾーンがあることに、ずっと気づいていなかったのです。
2杯で終わる夜も、3杯で笑って帰る夜も、全部「飲みすぎなかった夜」として成立する。
当たり前のことですが、禁酒という目標に囚われていた頃の私には、まったく見えていませんでした。
禁酒と減酒の心理的な違い
禁酒は「守り続けること」が前提の目標です。
一度破れば振り出しに戻る。だから破った瞬間に「もうどうにでもなれ」という心理が働きやすい。
減酒は違います。
「昨日より少し飲まない」が積み重なる目標です。3杯飲んでしまった夜も、先週の5杯より少なければ前進です。失敗が「終わり」にならない。飲んでいるのに成功体験として蓄積するのです。
禁酒を破った夜の自分は、自己嫌悪と開き直りが混在した、非常に不安定な状態になります。
減酒を少しオーバーした夜の自分は、「まあ次があるか」と比較的穏やかに眠れます。この心理的な差が、継続力の差に直結してくるのです。
完璧主義は、失敗を致命傷にします。グレーを許容する思想は、失敗を経験値に変える。
人生の多くの場面でそうであるように、お酒との付き合いもまた、白黒つけようとした瞬間に窮屈になるのです。
飲みすぎなければ失敗も減る、という当たり前の気づき
これを書くのが少し恥ずかしいのですが、正直に言います。
「飲みすぎなければ、あの失敗のほとんどは起きなかった」と気づいたのは、減酒を始めてからずいぶん経った頃でした。
記憶を飛ばしたのも、財布をなくしたのも、知らない人に絡んだのも、すべて「飲みすぎた夜」の出来事でした。2、3杯で帰った夜に、そのような失敗は一度も起きていないのです。
当たり前です。でもその当たり前に気づくまでに、何年もかかりました(笑)
酒癖の原因は、「飲酒量」です。
だとすれば、戦う相手は「お酒」ではなく「量」です。
禁酒は相手を間違えた戦いだったのかもしれません。
適切な量と付き合えるなら、お酒は敵ではなく、ずっと友人でいられる。
そう思えたとき、少しだけ肩の力が抜けました。
具体的な減酒の実践方法


難しいことは何もありません。小さく続けられることだけをすればいいのです。
手の届く範囲に酒を置きすぎない
冷蔵庫にビールが5本あれば、5本飲んでしまう可能性があります。1本しかなければ、1本で止まります。まとめ買いをやめて、飲みたいときに1本だけ買いに行く仕組みにしましょう。当たり前ですが食べなければ痩せるようにお酒が飲めなければ酔わないのです。
飲酒量を記録する
近年、飲酒量を記録するアプリがあるのをご存じでしょうか。手軽に記録できるのでメモするのをお勧めします。数週間続けると、自分の適量とパターンが見えてきます。「記録している」という意識自体が、飲みすぎへの抑制にもなります。
「あえて今日は飲まない」を増やす
禁酒ではなく、あえて飲まないという考え方です。例えば3回に1回でも飲まない日を作れば、それだけで飲酒量は減るわけです。「飲む」にも様々なスタイルがあることを知るのは良いことだと思います。
※詳しくはこちらの記事を▼


減酒して変わったこと


ここが、読んでいる方が一番知りたいところだと思います。
記憶を失わなくなる。
当たり前ですが、これが一番大きい。翌朝にスマートフォンを怖々開く必要がなくなりました。昨夜の自分が何をしたか、全部わかっている。それだけで朝の気分がまるで違います。
翌日の自己嫌悪が減る。
「また飲みすぎた」という朝は、頭痛だけでなく自己嫌悪も一緒にやってきます。あの重さがなくなったことで、月曜の朝がずいぶん軽くなりました。精神的な二日酔いは、身体的な二日酔いより長引くものです。
お金が減らなくなる。
タクシー代、深夜のラーメン、なぜか奮発した次の日の朝ごはん——飲みすぎに付随する出費が消えました。飲酒代そのものも減ったので、月単位で見ると体感できるくらい変わりました。
お酒を前より楽しめるようになりました。
これが一番意外な変化でした。量を減らしたことで、一杯一杯を味わうようになりました。飲みすぎていた頃は、何杯目かも覚えていないまま飲んでいた。今は、一杯のおいしさをちゃんと感じています。
お酒を敵にしなくてよかった、と思っています。
まとめ|大事なのは意志力ではなく仕組み


これは意志力の問題ではではないと思っています。
禁酒を何度も決意できる人間が、意志の弱い人間のわけがない。
問題は、強い意志を間違った方法に使っていたというところにあると思います。
「飲まない」という完璧な目標を立てて、自分にがっかりし続ける…。
「減酒」は、自分に期待し過ぎるのをやめる、ということです。
シラフの時分に、酔った自分が失敗しにくい環境を先に作っておく。
家の酒を減らす、記録をつける、今夜だけ飲まないと決める—。これらはすべて、シラフの時に動く話です。
仕組みを整えたら、続きます。
かくいう私は今でもたまに飲みすぎますし、たまにやらかします。
完璧にはほど遠いけれど、若かったあの頃に比べれば翌朝にスマホを恐る恐る開くことも、財布の中身に驚くことも減りました。
それだけで、ずいぶん軽くなりました。
酒との付き合い方は、自分との付き合い方によく似ています。
完璧を目指さず、全否定もせず、ただ少しだけ、昨日より賢くそこに在る。
それで十分だと、今は思っています。
同じように悩んでいる方がいるなら参考にしていただければ幸いです。
ではまた。
※アルコール依存が疑われる場合は、専門医にご相談ください。








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