私は自分が何も知らない事しか知らない。
ソクラテス
皆様こんにちは。酒マニアのシサカです。
居酒屋でビールを一杯傾けながら、こんなことを思ったことはありませんか。

あー、また体に悪いことしてるわ…
…。
飲んだ翌朝、なんとなく罪悪感を抱えながら水を飲む。健康診断の前だけ断酒してみる。
でも結局、仕事終わりの一杯はやめられない—。
お酒好きな人なら、誰もが経験したことのある葛藤だと思います。
ぼく自身も長年「飲む人は早死にする」と信じていましたが、ちゃんと調べてみたら、「お酒は体に悪い」という常識が必ずしも正しくないことがわかってきました。
飲酒と健康の関係について、研究データをもとにわかりやすくまとめます。「お酒好きだけど、体のことが心配……」という方にこそ読んでほしい内容です。
- 適量の飲酒が健康にいい可能性がある理由(複数の研究データあり)
- なぜ飲みすぎると危険なのか(Jカーブ効果とは)
- お酒の強さが遺伝子で決まるメカニズム
- 日本人の約44%がお酒に弱い体質である理由
結論:適量の飲酒は「体に悪い」とは言い切れない

はじめに結論からお伝えします。
適量のお酒であれば、飲まないよりも健康にいい可能性があります。
これは複数の研究で示されていることで、「酒は百薬の長」という言葉には、科学的な裏付けがあるのです。
ただし、ここには大きな前提が2つあります。
- 「適量」であること
- 自分の体質に合った飲み方であること
この2つを理解せずに「お酒は体にいい!」と解釈するのは危険です。
以下で詳しく解説していきます。
お酒を飲む人の方が長生きする?研究でわかったこと

国立がん研究センターが40〜69歳の男女約10万人を長期追跡した研究(JPHC研究)によると、まったく飲まない人より、少量飲む人の方が死亡リスクが低いという結果が出ています。
「酒は百薬の長」は、あながち迷信ではなかったわけです。
なぜ体にいいのかというと、適量のアルコールには「善玉コレステロールを増やす」「血液をサラサラにする」「ストレスを和らげる」といった作用があると考えられています。
ただし、「飲むほど健康」ではありません。
少量でリスクが下がる一方、飲みすぎると今度は急上昇します—。
この関係が「J」の字に似た形になることから、「Jカーブ効果」と呼ばれています。

目安として、純アルコール量でいうと1日23g未満がひとつのラインです。
お酒に換算するとこのくらい。
| お酒の種類 | 目安量 |
|---|---|
| ビール | 中瓶1本(500ml) |
| 日本酒 | 1合(180ml) |
| ワイン | グラス2杯程度 |
| 焼酎(25度) | グラス1杯程度 |
※なお、このJカーブには反論もあります。
2018年にLancetに掲載された論文では「安全な飲酒量はゼロ」と結論づけており、厚生労働省の飲酒ガイドライン(2024年)でも「低リスク飲酒の明確な指標を示すことは困難」との立場をとっています。
糖尿病・高血圧・高中性脂肪など持病がある方は、少量でもリスクになり得るため、かかりつけ医に相談するのがおすすめです。
「少量なら体にいい可能性がある、でも確定はしていない」
このくらいの温度感で読んでもらうのがちょうどいいと思います。
お酒の強さは「遺伝子」で決まる


じゃあ、自分の適量ってどれくらいなの?
ここで重要なのが遺伝子の話です。
「飲めば強くなる」という話をよく聞きますが、これは体がアルコールに慣れて酔いを感じにくくなっているだけ。
実際の分解能力は遺伝子でほぼ決まっており、鍛えて上げることはできません。
アルコール分解の2ステップ
体内に入ったアルコールは肝臓で2段階に分けて処理されます。
ステップ①:アルコール → アセトアルデヒド
「アルコール脱水素酵素(ADH)」がアルコールを分解して、アセトアルデヒドという物質に変換します。
このアセトアルデヒドこそが、頭痛・吐き気・顔の赤みなど二日酔い症状の元凶です。
ステップ②:アセトアルデヒド → 酢酸(無毒)
「アルデヒド脱水素酵素(ALDH)」がアセトアルデヒドをさらに分解して、無毒な酢酸に変えます。
酢酸は最終的に水・熱・炭酸ガスとして体外に排出されます。
この第2ステップで登場するALDHのうち、「2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」という酵素がお酒の強い・弱いを大きく左右するポイントになります。
日本人の約半数はお酒に弱い
ALDH2の遺伝子には2種類あります。
「分解能力の高いN型(活性型)」と
「分解能力の低いD型(不活性型)」です。
人は両親からそれぞれ1つずつ遺伝子を受け継ぐため、3つのタイプに分かれます。
| 遺伝子型 | タイプ | ALDH2活性 | 血中アセトアルデヒド濃度(同量飲酒時) |
|---|---|---|---|
| NN型 | 酒豪タイプ | 高い(標準) | 基準 |
| ND型 | 中間タイプ | NN型の20%以下 | NN型の4〜5倍 |
| DD型 | 下戸タイプ | ほぼゼロ | NN型の20〜30倍 |
これは日本人だけでなく、中国人(約41%)など東アジア系に共通して見られる特徴で、欧米人はほぼ0%です。
「顔が赤くなる人」は特に要注意?
お酒を飲むと顔がすぐ赤くなる人(フラッシング反応)は、ほぼND型かDD型です。
「赤くなるだけで飲めてるから大丈夫」と思っていませんか?
実はこれ、アセトアルデヒドが体内に蓄積しているサインなんです。
アセトアルデヒドは国際がん研究機関(IARC)が「グループ1(ヒトに対する発がん性が確認されている)」に分類している物質です。
特に深刻なのが食道がんとの関係。
九州大学の研究によると、ND型の飲酒者は…、
- 中等度飲酒で食道がんリスクが3.12倍
- 大量飲酒では7.12倍
にまで跳ね上がることが示されています。
「鍛えれば強くなる」どころか、無理して飲み続けることでむしろ重大なリスクを高めている可能性があるのです。
「お酒が強い」人も安心できない


じゃあNN型の人(酒豪)はいくら飲んでも大丈夫なの?
という疑問も出てくると思います。
答えはNOです。
ALDH2の能力が高くても、大量に飲み続ければ肝臓へのダメージは着実に積み重なります。
顔が赤くならない・二日酔いになりにくいというのは、ダメージを感じにくいだけで、肝臓では着々と蓄積が進んでいる可能性があります。
佐賀大学医学部ALDH2研究室でも、「ALDH2*2保有者は飲みすぎでも生理指標の悪化が起きにくいため、過剰飲酒を見逃すリスクがある」と指摘されています。
「お酒に強い体質」とは、ある意味で「危険信号に気づきにくい体質」でもあるのです。
まとめ:「酒は百薬の長」は適量と体質が大前提

この記事の内容を整理します。
| ポイント | 内容 | 主な出典 |
|---|---|---|
| 少量飲酒の効果 | 飲まないより死亡リスクが下がる可能性 | 国立がん研究センター JPHC研究 |
| Jカーブへの反論 | 「安全な飲酒量はゼロ」説もある | Lancet 2018 |
| 多量飲酒のリスク | 全死亡リスクが女性1.6倍・男性1.4倍 | Holman CD et al. MJA. 1996 |
| お酒の強さ | 遺伝子(ALDH2型)で決まる | 九州大学・各種研究 |
| 日本人の体質 | 約44%がND型・DD型(お酒に弱い) | からだカルテ等 |
| フラッシング反応 | IARCグループ1発がん物質蓄積のサイン | IARC/九大リポジトリ |
| ND型の食道がんリスク | 中等度飲酒で3.12倍、大量飲酒で7.12倍 | 九州大学・吉原達也 |
| 酒豪タイプも注意 | 強くてもダメージは積み重なる | 佐賀大学医学部ALDH2研究室 |
調べれば調べるほど「自分がいかに何も知らなかったか」を思い知らされます。まさに冒頭のソクラテスの言葉そのままです。
次のステップとして、自分の遺伝子タイプを把握することをおすすめします。
最近は市販の遺伝子検査キットでもALDH2のタイプを調べることができます。
自分の体質を正しく理解した上で、お酒をうまく楽しんでいきましょう。
適量の具体的な計算方法については、また別の記事でまとめようと思います。
ではまた。
参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん対策研究所「飲酒と死亡リスク」https://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/2604.html
- 国立がん研究センター JPHC研究「飲酒および飲酒パターンと全死亡・主要死因死亡との関連」J Epidemiol. 2018 Mar 5;28(3):140-148
- 日本医事新報社 Web医事新報「飲酒量と死亡率の関係がJカーブを描く理由は?」
- GKH Holman et al. “Meta-analysis of alcohol and all-cause mortality” MJA. 1996; 164: 141-145
- GBD 2016 Alcohol Collaborators. “Alcohol use and burden for 195 countries and territories” Lancet 2018; 392: 1015-1035
- 九州大学学術情報リポジトリ 吉原達也「ALDH2遺伝子多型と臨床医学」
- 佐賀大学医学部 ALDH2遺伝子多型研究室 https://sagasocialmed.med.saga-u.ac.jp/aldh2/
- からだカルテ「遺伝子で決まる?!お酒の『強さ』」
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年)
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